「意余って技足らず、技余って心なし」

これは絵を最初に教えて頂いた先生からの言葉です。制作する中で今も拠り所にしています。
意欲や心があっても技術がなければ表現は叶わない。テクニックだけでも退屈な絵になってしまうという教えです。
技術面と精神面、共に重要である事を教えてくれています。

★目指す頂き

まず、創作のたどり着く先の頂きを見ていきましょう。
初心者でも頂きが見えれば意欲も湧き、自分に合った登山道を見つけられます。
大切なのは登ろうとする意欲です。意欲の源泉はまだ見ぬ眺望と達成感です。
私が絵画教室で教えているやりかたは童謡などの歌詞を絵に描かせながら頂上を示すことです。
登るにつれて頂上の見え方は変化してきます。

「朧月夜(おぼろづきよ)」を例に話を進めます。物語の舞台は貴方が体験した春の夕暮れです。
  1. 菜の花畠に、入日薄れ、
    見わたす山の端霞ふかし。
    春風そよふく、空を見れば、
    夕月かかりて、にほひ淡し。
  2. 里わの火影も、森の色も、
    田中の小路をたどる人も、
    蛙のなくねも、かねの音も、
    さながら霞める 朧月夜。


創作とは:新しいものをつくり出すこと。絵画などの作品を独創的につくり出すこと。

貴方がこれまで体験した月夜はどんな風景ですか?
その風景にこの歌詞を重ねたときにどの様な情景が想い浮かびますか?人それぞれの景色が現れます。
そこから感じる感情や持ちが「首題」です。その首題を表現して共感してもらうこと、それが頂上です。

歌詞の中には菜の花、や鐘の音など様々なモチーフが登場します。モチーフを複写しただけでは 首題(心持)は表現出来ません。
貴方が描く舞台の背景はどんな感じにして、どのモチーフを主役にしますか?脇役は何にして舞台のどこに立たせますか?
主役は首題ではありません。あくまでも心持です。その首題を表現するのに効果的な配置や色を決め演出をしていきます。素材を活かして形や色を駆使して、 持ちを見えるものにするのです。
貴方独自の世界観を見出してください。それを作品に仕上げていくのです。道は険しく遠くでも頂上が見えてきました。

頂上を見通すための段階的技術説明は次の「作画計画」のページをご覧ください。

創作のサイクル

創作は作るだけで終わりではありません。
想像を広げる力を養う必要があります。
それには、自分だけで作るのではなく習ったり教えたり、発表して、
衆目にさらしたり客観的に自作品を見つめることが重要です。
他者に見られることで作品は完成します。
固定観念に囚われない柔軟な発想が新たな道を開きます。